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陶展「その時そのときを描く」& 堂前 守人
「もうね、時間を感じるね」。
「やれるときにやらなくてはね」。
2022年の陶個展「3・四・5・ロク・7・はち」前に、堂前守人氏からいただいた言葉。悲観的でもなく、達観的でもない。ご自身の信念を無理なく貫き、やりたいことを遂げるのにあとどのくらいあるのか。あるいは、残された時間をむしろ試すか、楽しむかのようにも聞こえました。
沸き立つ希望や思いに対して、優先順位やその時々の状況を考えながら、最善の方法を選ぼうとされているように見えます。そんな堂前氏のスタイルが作品に表れていると感じています。

BIOMEで、これまでに堂前守人氏の個展を企画・開催したのは、コロナ禍の事情なども合わせると5回ほど。BIOMEにおける陶への視線をひらき、その流れをつくり続けています。
「かつて庶民はぼてっとした素朴で加飾の少ない民芸的な陶器を使っていたのでしょうね。それぞれいいものはいいですが、その中間的な物が好きです。これでもかというほど手を入れ過ぎず、茶色やグレーの暗い色調に手抜きの模様が入った渋いだけの陶器でも無く、安心して使えて、明るい器が作りたいと思っています。
と言いつつ、いつもさま ざまなものに興味は旺盛ですので、今回は骨董の影響が出ていそうです。我ながら単純だなと思っています。」(2021年 陶個展「日めくりの器」から)

堂前守人氏の陶は、暮らしのなかで使われる鉢、皿、碗などを中心としています。しかし、その魅力は実用性だけでは語れません。草花や風景、色、線、そして古い器の気配を重ねながら生まれる表情は、使い手とともに時を刻んでいくようでもあります。
「機能美」と「装飾美」を明確に分けるのではなく、そのあいだを行き来しながら制作を続けていることも、堂前氏の作品の特徴といえるでしょう。
“自分でできることは自分で、それが生活、生きるということ”―
そう語るアーティストを何名か知っています。堂前氏もそのひとりです。堂前氏が描く花は、懐かしさを誘う植物でも華やかな花でもなく、自生し、どこにでも生え、力強く生きようとする野花たちです。それらがさりげなく、ふつうに咲いている姿。その絵に「色」「文様」「厚さ」「フォルム」が加わったような、そうした要素が体現された器が多いように感じます。
「自分の作品のもとにあるのは、日々見ている草花や風景、古い器や古いものの手触りのようなものです。特別に遠いところから来るというより、工房のまわりの草花だったり、季節の移り変わりだったり、日々の暮らしの中でふと目に入るものだったりします。同じ花でも、見る時期や気分によって違って見えるので、何度描いても飽きません。」
2026年6月からはじまる「その時そのときを描く」陶展。堂前氏が数年前から、器の裏に年号と月を記し、その時々に見た風景や草花を描くようになったことに由来しています。
きっかけのひとつには、ニュージーランドで出会った陶芸家の存在がありました。使うための器であっても、一つひとつを作品として制作し、年号やサインを入れる。その姿勢に触れた経験が、長く残っているといいます。
「一つの方向に揃えるのではなく、その時 に気になるもの、作ってみたいものを続けていくうちに、複数の流れが生まれてきました。」
