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Knowing More About
日本画「GARDEN」& 木下 めいこ

*本記事は、木下めいこ氏からいただいた話と、BIOMEのブログやNews Releaseなどの公開資料をもとに作成・編集しています。

​PDFバージョンについては、こちらをクリックしてください。

“日本画”の定義というものは、あるようでない気がします。
膠を接着剤として“天然の鉱物などを砕いた粒子のある絵具で描く絵”であることは大きな魅力ですが、それだけが“日本画”ではなく、日本という言葉から感じたり、思い浮かべたり、その印象や精神を表現する絵画が“日本画”であると思います。

2023年12月にBIOMEにて開催された『「楚なり半透明な」3人のリレー展 牧野環・むらいゆうこ・木下めいこ』(以下、「楚なり半透明な 3人のリレー展」)で、日本画についてお聞きしたときにいただいた木下めいこ氏からのお話です。
「楚なり半透明な 3人のリレー展」でお会いした際、中山手のBIOMEにあった植栽にご興味をもたれ、「わぁ、この色は初めてだ」、「これは描いてみたいな」と、生き生きと目を輝かせていらっしゃったのがとても印象的でした。ご興味あることへの目線や探求心は、宝であると感じた次第です。

色々な画材や技法で制作することが好きで、「これは日本画ですか?」とよく言われますが、私はあえて日本画と言います。国の名前がついた絵画なんてそれだけで特別で、何か凄いパワーを感じませんか?

木下氏が扱う画材に、貝紫というのがありました。貝で染める紫のことです。
天然染料には、草木などの植物染料以外に、動物染料や鉱物染料があります。貝紫は、動物染料の一種で、高貴な色として珍重され、帝王紫とも呼ばれ、富と権力を象徴する色でもあるそうです。
「楚なり半透明な 3人のリレー展」でご紹介した「藤」は、貝紫を用いた、鮮やかで堅牢性に富む紫色の美しい作品で、心を奪われた方が多くいらっしゃったことを覚えています。

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近年、木下氏はかねてより取り組んでいるサイアノタイプ作品に再び注力していらっしゃいます。
その作品のひとつが、東京の中目黒にある「郷さくら美術館」で開催された『第6回 – 2026 「FROM  - ここからの日本画 – 」』にて出品されました。「空創~さくらさくら~」(六曲一双屏風 180 x 720cm)
という大作です。
2024年の「FROM」に出品された「空創 create the sky」も六曲一双屏風の作品でした。違いについて、木下氏に伺いました。

2024年に発表した「空創」はサイアノタイプのみで、藍は使っていません。
2024年に制作したときより、今はサイアノタイプの使い方にバリエーションができ、そのひとつとして、藍を併用するようになりました。
サイアノタイプでは薬品を洗い流すために水を使うのですが、藍は水に強く、色落ちすることがあり
ません。とても相性が良いです。
偶然なのですが、「空創~さくらさくら~」の花の雄蕊を藍で描いたところ、サイアノタイプとの化学
変化なのか、周りが白く色抜けしました。和紙の真っ白でない感じとの組み合わせで、まるで金で描い
たかのように見えたのが発見でした。
そういったワクワクが毎回あり、サイアノタイプはとても面白いです。自分の手に負えない、思い通り
にならない偶然の連続によって、自然とともに描いている気持ちになります。

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2024年と2026年に出品された「空創」は、木下氏が学生の頃に描いた藤の作品と合わせると3作目とのことです。シリーズとして描かれていくそうです。

サイアノタイプの青と和紙の白い色の組み合わせを見た時、その色の対比が空のようであったことから、大作でサイアノタイプを使って描く、木の花の作品を、今のところは「空創」シリーズとしています。

2026年7月4日から開催の日本画 個展「GARDEN」でも、サイアノタイプを用いた作品が重要な位置を占める予定です。

サイアノタイプは、青写真の技法として知られています。ただし、木下氏はそれを従来のプリントとして扱っているわけではありません。薬品で夜のうちに描き、朝に太陽光に当て、水で洗い流す。その工程を何日か繰り返しながら画面をつくります。
その日の太陽の強さ、光に当てる時間、水で洗い流すタイミングによって、青には異なる表情が生まれます。さらに、岩絵具、銀泥、銀箔などを用いて部分的に彩色を加えます。花を上に置いて像を写し取るのではなく、サイアノタイプの青を重視しながら、描く行為として制作している点に、木下氏の特徴がうかがえます。また、太陽や時間を制作の中に取り込み、自然とともに描くことは、日本画として発表する理由にもつながっているようです。
サイアノタイプの青について、木下氏は、北斎などの版画で用いられた青にも通じる成分だと聞き、その色に惹かれる理由を改めて感じたといいます。光、水、筆の動き、岩絵具や銀泥、銀箔が重なり、木下氏の自然へのまなざしと結びついています。

「GARDEN」のキービジュアル作品は、《輝跡 〜ひまわり〜》です。杉板、絹、岩絵具、染料ほかによる大作です。サイズは160cm×546cm。「GARDEN」では、《輝跡 〜ひまわり〜》を全体で展示する予定です。
黄色や山吹色を全面に使った日本画の作品はめずらしいのでは?とお聞きしたところ、木下氏から貴重なお話をいただきました。

日本画の岩絵具の鮮やかな黄色は天然ではなく、水晶やガラスに染料などで着色しています。そのため、年月が経つと色が変色しやすいといわれています。
鮮やかな黄色の岩絵具が出来たのは近年のことで、江戸時代ぐらいまでは、今のように日本画の絵の具
にバリエーションがなく、天然の素材だけでした。そのため黄色は、金か黄土か、植物染料のようなものしかなかったのです。
天然にない色を作るため、海外から入ってきた技術や、合成の技術によって、色のバリエーションが作られました。今の日本画の絵の具には、たくさんの新しい色があります。
しかし、染料を使って染めている色は光に弱いので、これから何百年も経つと変化してしまうものもあるのではないかと、私は学生時代から思っていました。基本的に、昔から使われてきた天然の岩絵具だけを使っています。
ここまでお話すると、《輝跡 〜ひまわり〜》のひまわりの黄色は、特別な天然の黄色なのだろうと思わ
れるかもしれません。しかし、このような発色の天然の黄色の岩絵具は、先の話の通り存在しません。
天然推しの私ですが、ここが私らしいといいますか、良いものであればこだわりも手放すといいますか、日本画の岩絵具以外も使っています。何の絵の具の黄色なのかは秘密です。

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木下めいこ氏の作品は、同じ方が描かれたようにはみえないくらい、創作の幅の広さを感じさせます。

《輝跡 〜ひまわり〜》に加えて、更にいくつかの作風があり、並べると5人展ぐらいに見えてしまうの
で、今回はこれでも頑張って、作風を幾つか封印してきました。
なぜ色々な作風になっているのか?と言うと、子どもの頃に習っていたお絵描き教室に遡ります。
デザイン系の先生だったため、たくさんの素材や技法で制作させてもらいました。技術はもちろん、
画材の面白さや、素材と対話しながらともに作り出す楽しさを学んだ気がします。描きたい対象(私の
場合は花や自然の風景)に出会った時、この感動を一番近い形にとどめたい!と思います。

 

それが、技法というか、技術であるため、気づくと作風が色々になっています。飽きないため、いつも
ワクワク、ドキドキしながら制作し、色々と挑戦しています。
その時その時に、今、自分ができるやり方で、絵を続けられるように心がけてきていることが、作風の
バリエーションに繋がっている気がします。

花、草木、鳥、虫、空。季節、そしてそれぞれがもたらす気配や感覚。「GARDEN」とは、自然にあるあらゆるものが集まる場所を意味します。

木下めいこ氏の作品は、花や自然を描きながらも、花を美しく写し取ることだけにとどまりません。
植物、鳥、虫、空といった、古くから日本画に描かれてきたものを扱いながらも、季語のように季節を正しく示す表現にとどまらないところに特徴があります。

季節の盛りを過ぎてなおも目に残るもの、時期を外れて現れたもの、その日その場所でふと視界に入ってきたもの。季節を説明するためではなく、その時に見えてしまった自然の姿を、杉板の木目、絹、岩絵具、染料とともに表現しています。

木下めいこ Meiko Kinoshita

東京都生まれ、神奈川県在住。

多摩美術大学日本画専攻卒業
多摩美術大学大学院日本画修了

元多摩美術大学日本画・芸術学科非常勤講師
美術家連盟会員

2003年第1回奈良万葉日本画大賞展準大賞
2012年Artist Groupー風ー入賞
2013年第1回小泉淳作記念日本画大賞展東大寺賞
2015年第3回郷さくら美術館桜花賞展優秀賞
第6回日経日本画大賞展入選
2018年第6回郷さくら美術館桜花賞展奨励賞

主な収蔵先
郷さくら美術館、奈良万葉文化館、オランダホテルオークラ、中国紫雲湖ホテル、ウェスティンホテル恵比寿、鎌倉観光協会、羽田空港アメックスセンチュリオンラウンジ、パークハイアット東京プレジデンシャルスイートほか

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前回の展示会に関する記事:

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過去の展示会に関する記事:

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2026.5 

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2026年1月以前のインタビュー記事は下記からお願いいたします

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