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12月の人 えがしらみちこ

えがしらみちこさんの、4年ぶりとなる本格的な絵画個展をBIOMEで開催いたします。


2021年の「クリスマスの砂糖菓子」展以来となる本展では、日々の衝動や、目に留まった光景を描き溜められてきた水彩作品が並びます。

その小品群は、仕事としてではなく、ご自身の手の赴くままに描かれた視線の集積と言ってよいかもしれません。


えがしらさんは、絵本作家として広く知られていますが、もともとはイラストレーションを軸とする仲間たちの中で絵画を磨いてこられました。


近年は、出版や物語の枠に依存せず、「描きたいと思う瞬間に描く」ことを大切にされていると伺います。今回の個展は、その営みがギャラリーとしてBIOMEのひとつの空間に集約され、静かに提示される機会となります。


BIOMEがとても好きなえがしらさんの写真。     2021年入手
BIOMEがとても好きなえがしらさんの写真。     2021年入手

絵本に登場する子どもや花というモチーフは、可視的な可憐さだけではなく、「形そのもの」「その時の呼吸」を紙面に残すための入口に過ぎないと考えます。

Knowing More Aboutでも、子どもの頬のかたちや、ふと視界に入った花の佇まいを言語化せず、色と線で残そうとする姿勢が語られていました。

本質としては、目の前の像を正確に写し取ることよりも、気配や余白を漂わせることで、予期できない子どもたちの表情や動物とのふれあい、道端で出会う草花がいきいきとみえてくるんじゃないかと思います。



鑑賞者が作品の前に静かに立ち、画面の奥にある空気を感じ取るための時間と密度を保つことを、えがしらさんにご説明し、我々も過去の展覧会をもとに準備を進めてきました。


書店や雑貨店など、日常的な場で作品を見せる方法がえがしらさんの表現として自然である一方、今回は「静けさを前提とした鑑賞」を成立させる場所として、ギャラリーが適していることを確認し合った経緯があります。


えがしらさんは、水彩技法をまとめた書籍や、制作過程の公開を通して、描くことを誰かへ手渡す可能性を開こうとしてこられました。技法に閉じず、背景に手を加えすぎず、偶然やにじみをそのまま残す描法は、より自由な表現へ向かう意志の表れでもあります。



「ちいさな世界 ― 花と子どもたち」個展では、描きためられた水彩が一堂に並びます。

どこかで見たようで、しかし特定できない子どもたちの姿、植物の息づかい、もしかしたら全体をかつての幼い自分を彷彿させるような空気感。そのいずれもが、静かな空間の中に置かれることで、鑑賞者自身の記憶や視線を呼び起こすきっかけとなります。


絵本のような明確な物語を語るわけではありませんが、言葉に置き換えられない感覚――色、余白、呼吸、沈黙――がそこにあります。


作品の前で立ち止まり、ゆっくりとご覧ください。

日常の延長にある光景が、アートとして静かに立ち現れる瞬間を味わっていただければ幸いです。


2025年12月 えがしらみちこ 絵画個展


「ちいさな世界ー花と子どもたち」


2025年12月6日(土)-12月27日(土)


12:00−17:30


最終日 11:00−15:00


​休廊日 水曜・木曜日


同個展の入場は予約制、

作品購入はエントリー制・抽選制

とさせていただいています。

くわしくは、ボタンから。



 
 
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