Art Basel in Basel③
- NORI Kuriyama
- 7月4日
- 読了時間: 3分
第二部:
熱気と多様性—バーゼルの現場から
メイン会場に足を踏み入れると、まるでパリコレのような華やかな衣装に身を包んだ人々と、真剣な眼差しで作品を見つめる来場者が同居していました。
欧米を中心に世界中のコレクター、ギャラリスト、学生、アートファンが一堂に会し、アジア系の来場者は少数派だったように思います。
関連イベントやパブリックアートも同時開催され、街の小さな店もイベントを盛り上げる一員として機能している様子が印象的でした。飲食店でも「アートバーゼルに来たの?」と声をかけられることが多く、街全体がアートフェアを歓迎し、巻き込んでいる空気を感じました。

フェアの詳細な構成は、多くの方が解説されていますので割愛しますが、「Galleries」「Kabinett」「Feature」「Premiere」「Statements」など多彩なセクターが設けられています。
今年新設された「Premiere」セクターは、過去5年以内に制作された作品のみを展示し、革新的な才能の発見の場となっています。
つまり、従来のセクターでは、既存の評価や過去の実績に基づく展示が多かったのに対して、新作限定という条件により、アーティストやギャラリーが、今まさに挑戦している表現や、時代の変化に即応したテーマがダイレクトに可視化されることが特徴かと思われます。
来場者やコレクター、美術関係者が「これからのアート」を感じ、見つけやすい構造が強化されているのですね。
一方で、歴史的な作品や旧作を再解釈し、売買を促す商業的な側面も根強く感じられました。新作だけにとどまらず、アートの歴史的文脈と現在の市場が交錯する場でもあります。
ただ、これらの熱気や新しい発見、商業的な盛り上がりを体感しても、私自身はどこか傍観者のままで、強い共感や「自分も参加したい」という気持ちには至りませんでした。アートフェアの現場が持つ独特の活気やネットワークの価値を認めつつも、それが自分にとって不可欠なものとは思えないのです。
一番人気であり、目玉ともいわれる大規模作品の展示をしている「Unlimited」セクター。体験型や大型のものが多く、一般の方も入れることからエンターテイメント性も十分にあるのですが。
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絶対に見逃したくない、自分のチケットでしか見ることのできないセクターを優先し、“しおり”を片手に、自分の足で会場を歩き、探しながら体感する、そこはある程度このフェアの経験や予習をしっかりしていなければ、数日かけてもなかなか見切れるものではありません。
2025年から新設された「Premiere」セクターでは、過去5年以内に制作された作品が展示されていました、今の時代を革新的に表現しようとする才能を発見する場となっていました。
このようなセグメントの拡充が、アートバーゼルを単なる商業イベント以上の「現場」として成立させているのは、主催者側の工夫と努力の賜物であると感じます。
【参考文献】