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BIOMEのひとりごと 2025年8月

アートシーンの話題や課題は、人が生きる上で関わる多くの事象に関連しているため、考えが尽きません。例えば、2025年に入ってから、「エコサイクル」という言葉が、アートの文脈でどのように使われているのか調べています。

主に、以下の二つの文脈ではないでしょうか。


一つは、環境面に焦点をあてたエコサイクルです。廃材や自然素材のような環境負荷の少ない資源を活用し、作品制作から展示、消費、さらには再利用や再資源化までを循環させる仕組みを重視する使い方です。「資源循環」や「サステイナブルなものづくり」と直接結びつく意味合いなので、イメージしやすいですね。


もう一つは、アート産業・文化の循環型システム、つまりアーティストや作品、ギャラリー、コレクター、資金などが互いに影響し合いながら循環している仕組みのことです。アート作品やアーティスト、ギャラリー、コレクター、資金など、アート産業全体が健全に巡る循環—創作、発表、評価・販売、そして再投資のサイクルを指すとされています。これは当事者にならなければわかりにくいですよね。

これ、美しくまとまって聞こえますが、実際には商流が投機的な側面を持っていることも事実で、そうした現実がある中で、このサイクルを理想的に回していくのは簡単なことではありません。今年、アートバーゼルに視察に行った際にも、こちらの文脈としてのエコサイクルの印象を強く受けました。


Art Basel in Baselより
Art Basel in Baselより

少し批判的に聞こえてしまうかもしれませんが、環境面でのエコサイクルについては、BIOME自体が主に取り組むべき領域ではないと考えています。また、その部分にスポットを当てすぎることに違和感も覚えます。一般社会や環境分野では、「自然資源や廃棄物の効率的循環=サステイナブルな資源循環(エコサイクル)」は、かかる費用にも影響することもあって、部分的に努力せざるを得なかなりつつあります。


一方で、アート業界や文化政策、マーケットの分野で使われる経済的なエコサイクルは、アート産業の「人・作品・資金などの価値循環を促す創造的エコシステム」なんて、その大切さに気づき、具体的な施策を見出すことは簡単ではありません。

アートシーンの安定化や持続的発展には、「人・作品・資金」が健全に循環する創造的なエコシステムを構築することが不可欠だと考えます。ギャラリーを運営していると、特にその必要性を強く感じるのです。

そんな仕組みやルール作りがあってこそ、アートシーンは初めて安定し、発展していくんじゃないでしょうか。


でなければ、消費者も観覧者もアーティストもギャラリストも、それぞれ自分の立場だけを主張し合い、旧態然とした取引の中でまとまってしまう気がします。

けれども、ルールに縛られすぎたアートなんて、ね…。



※以上は、特に引用した出典はございません。個人的な思いをまとめているだけです。


Art Basel in Baselより
Art Basel in Baselより

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