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アートの人に


繰り返しお伝えしていることですが、BIOMEでは、自称イラストレーター、画家、美術家、作家など、肩書きに関わらず、すべての方を「アーティスト」と総称しています。

最近、「アーティストがべらべら喋ってほしくない」という意見を目にしました。前後の文脈には何か主張があったのかもしれませんが、詳細までは追っていません。


美術館に収蔵されている古典の名だたるアーティストや、現代美術を牽引する著名なアーティストたち。彼らと直接言葉を交わす機会はほとんどなく、声を聞くことも叶いません。残された記録は限られ、客観的な資料が多いなかで、美術史家や学芸員の研究によって、その言葉は流暢で饒舌に再構成され、作品にさらなる重みが与えられ、語り継がれていきます。


一方、現在BIOMEでご紹介しているアーティストたちには、自身について語る機会があります。もちろん、無理に多く話すことや、饒舌であることを求めているわけではありません。言葉の数やスピード、声の大きさは本質ではなく、ギャラリストとして大切にしたいのは、「語るべきこと」を持っている人かどうか、それを自身の言葉で伝えようとする姿勢をお持ちかという点。

つまり、自らの作品の魅力や背景を伝える努力を惜しまないでほしい、ということです。

バーゼル美術館にて
バーゼル美術館にて

えてして、絵を描く技術の解説や、器だとこれは手捻りだとか、表層的な話題はそう必要ではないと思うのです。流行の表現方法を取り入れた、今は静物画の気分、この色が気に入っている、といった説明ならば、その根底にある理由や信念、心の動きを、ぜひ伝えてほしい。何より、今この瞬間、なぜこのように表現するのか、何を大切にしているのか、そのこだわりや想いを、自身の言葉で語ってほしい。


それから、

アーティストの価値を測る際、「人柄が良い」「見た目が魅力的」「流行に乗っている」といった要素は、決して本質的な基準にはなりません。


自らの表現を絵画や造形という形で選んだ以上、作品にはその時代、その瞬間の想いが必ず宿っているはずです。その想いを受け取ることで、作品の見え方は変わり、鑑賞者の心に深く響く瞬間が生まれるのだと思います。

だからこそ、作品について語ること、自身のステートメントを核に据え、個展ごとにどのように昇華し、展開しているのかを語れることは、アーティストにとって極めて重要な能力の一つだと、考えています。


べらべら喋ることが強ち悪いことではないのかもしれません。


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