木下めいこ② 二つの視点で
- 7月8日
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更新日:7月9日
現代の日本画に注目しています。師弟制度が色濃かった陶や磁やガラスに見受けられていた「○○でなければならぬ」というところが少なからず、顔をのぞかせる世界が、日本画にももしかしたらあったのかもしれない、目に見えない呪縛と言いますか。
絵画は描かれているものだけでなく、何に描かれているのか、どのような手順で画面が作られているのかに目を向けると、作品の見え方はどんどん変わります。
例えば、木下めいこさんの作品では、二つのものに注目してみようと思います。杉板という支持体とサイアノタイプという技法。
杉板は、古くは杉戸絵などにも用いられてきた素材です。杉戸絵は、杉板に絵を描いた間仕切りであり、建築の中に置かれ、日々の移動や視線の中で見られてきました。紙や絹のように均質な面ではなく、杉板には木目があります。年輪があり、節があり、一本の木が成長してきた方向があります。

今回取り上げる作品では、その木目が縦ではなく横に用いられています。木が上へ伸びていく方向をそのまま見せるのではなく、横へ流すことで、木目は風景の層のようにも、時間の経過のようにも見えてきます。水上に反射した水紋にも見えるから不思議です。もっとも見せたいものとの間に、何か異質のフィルターが入る柔らかさ。間接法の楽しさです。描かれたものと、板そのものが持っている線が重なり、画面の中に、筆だけでは作れない奥行きが生まれています。
もうひとつ、木下さんが強い関心を寄せているのがサイアノタイプです。
BIOMEでは当初、サイアノタイプの作品については点数を控えるとを伝えました。ところが木下さんからは、むしろそれらの作品を増やしたいという話がありました。サイアノタイプは、単に画像をプリントするための方法ではない。何度も洗い流す工程の中で、水が垂れ、青が重なり、深く沈んでいく。その青には、藍とは異なる美しさがあるのだといいます。

その話を聞いて、こちらの見方も変わりました。
サイアノタイプの青は、あらかじめ決められた色を塗るものではありません。
光に反応し、水で洗われ、乾く過程の中で現れてきます。木下さんにとってそれは、写真の技法であるのだろうけれど、青を育てていくような営みであって、絵画の技法であるのです。
杉板の木目が、木の時間を画面に持ち込むものだとすれば、サイアノタイプの青は、光と水の時間を画面に残すもの、と言えるのでしょうね。
「何度も何度もやるんですよー!」と叫ぶ木下さん。
プリントの意識が強かった私も、藍で描くものとの相対が楽しみになってきます。
描かれた図像だけでなく、支持体や技法そのものが何を見せているのか。そこに目を向けることで、木下さんの作品は、より多層的に見えてくるはずです。呪縛なんて、なんのその、そんな声が聞こえてくるかのようです。
木下めいこ 日本画個展「GARDEN」
07月04日(土)ー07月26日(日)
12:00−18:00
最終日:12:00ー15:00
休廊日:水曜・木曜日
