葉明慧 手の気配
わぁー、この作品、どこを持とう。
葉明慧さんの花びらの作品を見ると、まずそんなことを思ってしまいます。
小さな花びらが、一枚いちまい彼女の指先から生まれ、土肌に張り付けられているのです。
そっと触れて、目を閉じて指先の感触だけを確かめてみると、これがまた面白い。
そういえば、2022年の「たからもの for おくりもの」に出品された作品にも、すでにその片鱗は見えていました。

搬入のあと、葉さんから、目の疲れと腱鞘炎でずいぶん苦しんだと伺いました。それはそうだろうな、と納得します。今回も、人気が集まったのはやはりこの花びらのシリーズでした。けれど、今回の展覧会では、ほかにもぜひ見ていただきたい作品が揃っています。
土の中から出てきたものなのか。ずっと昔からそこにあった土器なのか。
素焼きのような色、ところどころ焦げたようにも見える茶や黒。どこか民族的でもあり、野生味もある。
それでいて、姿はとても端正です。
葉さんは、この茶系の作品について、こう話しています。
「暗めの茶系作品の土台にあるのは、土器やアンティークへの憧憬です。白泥と黒土を混ぜ合わせ、長い年月を経てきたかのような古い土のグラデーションを生み出しました。その上に、黒化粧を使って、黒一色の「刺繍」を施すような加飾をしています。」(葉明慧)
「ネックレスをかけた壺(花入)は手捻りでつくったフォルムに、絵付けという名の「衣装」を着せる。それが私のスタイルです。今回は、美しいネックラインに贅沢な装飾品を添えるような感覚で表現しました。」(葉明慧)
たしかに近くで見ると、黒い加飾は描いた模様というより、土の上に刺繍を施したようにも見えます。
そしてもうひとつ、今回印象に残るのが「ネックレスをかけた壺」です。
「ネックレスをかけた壺(花入)は手捻りでつくったフォルムに、絵付けという名の『衣装』を着せる。それが私のスタイルです。今回は、美しいネックラインに贅沢な装飾品を添えるような感覚で表現しました。」(葉明慧)
なるほど、壺にネックラインがある。
そう思って見直すと、首の傾きや肩から胴へ続くかたちまで、少し人の姿のように見えてきます。そこへ掛けられた装飾も、単なる模様ではなくなってきます。
今回、この茶系の作品群は、できるだけ低い位置に設置しました。
棚の上から眺めるのではなく、地に近いところで見ていただきたかったからです。土からつくられたものが、地に近いところにある。その姿が、この作品にはよく似合います。
見た目には重みがありますが、表面に触れると、意外なほどさらさらとした土の感触があります。
ひとつずつ手でつくり、土の表面に手を加え、装うというところでは、やはり葉明慧さんの作品なのだと思います。
