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11月の人 南谷富貴

南谷富貴(Fuki Nanya)さんは、アート然とした語り口とは少し距離を置く方です。それはつまり、木を扱うことが「表現の手段」である以前に、すでに日々の営みとして身体に染みついているということなのだと思います。古材を手に取り、削り、組み合わせることが、まるで呼吸のように自然なのです。


個展の前にと、神戸にお越しいただき、ギャラリーをご案内しました。そしてその後、忙しい合間であろう、帰る時間ギリギリまでご一緒しました。イタリアンレストランのカウンターでの一コマ。作品の話だけにとどまらず、話題はいつしか子育てへ。同世代の親として、笑ったり、共感したり、ちょっと寂しい話にうなずいたり――そんなあたたかな時間でした。その姿からは、作品を通して見えてくる「穏やかさ」や「人との距離の取り方」そのものが感じられました。


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南谷富貴さん


作品は一見すると静かですが、そこには相当な「荒行」があります。木を切り出し、削り、色を施す。そのひとつひとつの作業が、彼女にとっての祈りのようでもあります。

今回の個展タイトル《Reminiscence(レミニセンス)》は、記憶や回想を意味する言葉。古材との出会い、家屋の記憶、人が暮らした時間――それらを呼び覚ますことが、彼女の作品世界の核にあるのだと思います。


毎日新聞でも取り上げられていました(有料記事)。記事「人と建物が紡いだ残像=現代美術家・南谷富貴/岐阜」

素材へのまなざしの真摯さが丁寧に描かれています。


古材を通して、建物や人の記憶を再び「かたち」にしようとする南谷さんの姿勢が、まさに彼女らしいと感じます。木の静けさに耳を傾けるように、南谷富貴さんという人もまた、内に深い時間を湛えながら、柔らかな笑みで日常を生きておられます。

その人となりが、作品の隅々まで息づいているように思います。


さて、独自にインタビューしたKnowing More Aboutでも、南谷さんをご紹介中です。ぜひご一読ください。


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