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Reminiscence in FLUX|白磁がたどる“記憶のかたち” 青木岳文

現在開催中の二人展のお一人、先に個展をスタートした南谷富貴さんの立体作品は、古材。これらがまとってきた時間の澱が、静かな呼吸と心地よい木の匂いとなって漂っています。長いあいだ建材として役割を果たし、風雨にさらされ、手の跡が染み込み、その変化の層そのものが「記憶」として刻まれている。南谷の作品は、その記憶をそっとすくい取るように、新たなかたちへと変換していきます。

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その“記憶の変容(FLUX)”というテーマは、青木岳文さんの白磁にも不思議と響き合っています。これはあくまで設営の過程・結果として感じた印象ですが、東京の展覧会で拝見したときから、青木さんの白磁には、作業の積み重ねから生まれる時間が流れ込んでいるように思われました。


スポイトで一粒ずつ置かれた白磁の点の連なりが、一定のリズムを描かれていて、型取りされた直線的な面と並びながら一つの形をつくっていく。そのプロセスには、素材と丁寧に向き合う姿勢が見え、静かな造形の中にも明確な意志が感じられます。

急がず、確かめるように進む方なのだろうという部分と、控えめな印象とは裏腹に、作品への判断やこだわりには確かな自信があり、その点が作家としての強さにつながっていると感じます。

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花入などに見られる大胆な歪みや折れの扱いにも、その特性が現れています。完璧な均整を求めるのではなく、作陶の中で生まれる変化や生地の反応を受け止め、白磁に柔らかな表情を取り込んでいる点に、作家の人間味のようなものがのぞきます。



二人展「Reminiscence in FLUX」は、用途やジャンルにとらわれず、作家が素材とその背景を丁寧に読み解く場となりました。古材と白磁という対照的な素材が、それぞれの方法で“かつての時間”を現代へ引き寄せています。展示空間に立つと、二つの表現が静かに呼応し、ひとつの風景として立ち上がってくるように感じます。

異なる素材でありながら、深くつながり合う二人の世界。その中でも、青木さんの白磁が持つ明確な構造と集中した作業から生まれる強度には、独自の魅力があります。静かな佇まいでありながら、視線を引き留める確かな力があり、今回の展示であらためてその凄みを実感しています。


静かに移ろう“記憶のかたち”とともに、青木岳文さんの白磁が持つ強さをご覧いただければと思います。



青木岳文と南谷富貴の二人展

「Reminiscence in FLUX」

2025年11月15日(土)-30日(日)

12:00−17:30

最終日: 11:00−15:00

休廊日: 水曜・木曜

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